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人類社会の進化史的基盤研究(1)について

期間:2005年度〜2008年度(4年間)

  • 概要
 この研究プロジェクトは人類社会を霊長類から現生人類にいたる進化の軸上で比較考察し、人類学における社会理論の新たな展開をめざすこと、それによって人類の「文化」が社会形成にいかに関与しているかを再考するために組織された長期的プロジェクトの第1弾である。ここでは社会理論のなかで第一に問題となる「集団」に焦点が当てられた。すなわち、「集団」の概念を霊長類進化史上におくことにより、この概念の自明性を崩し、個体レヴェルの自他認識を越え「他集団」なる抽象的な他者の生成にいたる「集団」のなりたちをふくめ、「集団」の認識(perception)の生成と展開を進化史的な視点から検討することをめざしたものであった。これにより、他者認知やアイデンティティといった個体間関係、およびテリトリーの生成とその認知、規則の発生と定着の過程といった個体間関係を越えた社会事象にいたる問題群に迫る議論が展開されてきた。
 共同研究員としては、霊長類学の分野から霊長類社会学および霊長類生態学の専門家、人類学の分野から生態人類学、社会文化人類学、人類生態学の専門家を加えた。これに社会哲学(社会思想史)の専門家に参加してもらうことにより、霊長類から人類への架橋の理論的意義を考察する示唆を得てきた。社会事象にあって、「集団」は比較的顕在化(目に見えやすい)したものである。したがって、「人類社会の進化史的基盤研究」というときに、ひろく霊長類学的知見をふくめて、人類史的規模での比較の橋頭堡が築きやすい。長期的なプロジェクトとしては、継続的に「制度」、「所有」、「文化」などのテーマをあつかってゆく計画であり、その第一歩として、このプロジェクトを位置づけている。
 さらに、副次的効果として、近年、社会生物学(進化生物学、行動生態学)への理論的特化という傾向を強めつつある霊長類学研究を、人類との関係に再び位置づけることにより、この国における霊長類学および生態人類学の創成契機であった人間存在の根源的かつ多元的理解という学的動機を回復することを期待したものでもある。